ハンマーのストップについて

消音ピアノの仕組み

 
 

鍵盤を打鍵に合わせて連動するハンマーを、強制的にストップする構造についての説明です。

アップライトピアノ アクション

左の図はアップライトピアノのアクションの全体図


以下の消音の仕組み説明を見やすくするために、以降はアクションの一部分だけを抜粋し、簡略化した図面で説明します。

また、各パーツの制御に関しまして、ピアノ調律師中で一般的に使われている表現を使わせていただきます。


パーツ用語について

ストッパー:ミュートレール、消音バーなど各社の

呼び名がありますが、本文ではストッパーで説明します。


シャンク:本文中のシャンクとはハンマーシャンクを

     指します。


数値について:微妙な調整(打弦距離47〜48mm)なども

       基本数値のみを示します。

     

通常の打鍵

静止状態ではハンマーと弦が48mm離れています。


鍵盤を押し下げるとパーツが連動し、接点Aにてジャックがバットを持ち上げます。

持ち上げられたバットにより、シャンクに固定されたハンマーが弦の方へ移動、弦を叩きます。

ジャックがどのタイミングまでバットを持ち上げるかと言う、運動量が定められおります。


もしハンマーが弦に打弦する最終地点まで持ち上げていると、弦に接触したままで音がなりません。例えると壁にボールを投げる時、ボールを手から離さずに壁にボールをそのまま押し付けたような格好になるからです。


よってピアノの機構は、規定の位置までジャックが持ち上げた後、ハンマーが慣性で弦にぶつかり、軽やかに跳ね返るようになっています。

ハンマーを弦にぶつけ、軽やかに跳ね返すためにジャックがバットを突き放すような形になります。ハンマーが跳ね返った瞬間に弦は振動を

始めて、豊かなピアノ音が鳴りだします。


この跳ね返すために、ハンマーが突き放す動作をエスケープメント(脱進)と言います。そしてエスケープさせる点をレットオフと言い、通常はハンマーの先端と弦との距離が3mmに調整します。ピアノの調整では「レットオフを何mmに調整」などの表現をすることがあります。

レットオフはレギュレーティングボタンにてジャックの抜けるタイミングを調整し、加減されます。

打鍵後、接点Aにてバットを持ち上げていたジャックは後に接点Bにて運動を止められ、バットはジャックから突き放された格好になります。

この動作を「ジャックが抜ける」などと表現します。

またシャンクは強い打鍵に耐えうるように、打弦時には若干しなる(撓る)ような材質になっています。

消音とは?

上記のようにハンマーが打弦するわけですが、最初の図面をご覧ください。

ダンパーレールの付近にストッパーと言う新しい部品を取付けます。(正確にはダンパーレールをはずし、ストッパーと付け替えます)

ストッパーは可動式となり、消音時にON、通常演奏時にはOFFとなります。


このストッパーがレットオフの直後にシャンクの運動を遮ります。すなわちハンマーが弦に到達する直前にシャンクが強制的に止められる訳です。よってハンマーが弦を叩かない、音が鳴らないと言う仕組みになるわけです。


ただし、シャンクがストッパーに当たる音が雑音として発生することになります。この雑音はとなりの部屋にいれば気にならない程度ですが

同じ部屋にいるとかなり気になります。またヘッドホーンをしている本人は全く聞こえません。


しかし夜間の練習などで、ご近所に対して実際のピアノ音が騒音となるよりかは、はるかに有効な手段と言えるのではないでしょうか。